2022.3.28
取り組み事例 Vol.1 株式会社ミールケアさま
NAGANO-OIC2021
新しい価値のある給食と食教育を目指して
長野県内の企業と日本全国のスタートアップ企業の共創をうながし、新たな価値を生み出す「NAGANO-OIC」が2021年よりスタートしました。この記事では、初年度にプロジェクトに参加した株式会社ミールケアさまのお取り組みをご紹介します。
ミールケアさまは、経済産業省が認定する「地域未来牽引企業」にも選ばれる長野市内の企業です。創業以来、食に関する様々なサービスを生み出し、幼稚園や保育園、医療関係施設などに対する給食の提供や食育事業の展開、商品開発などを行っています。
今回は、専務取締役の関 友樹さまにお話を伺いました。
新しい価値のある給食と食教育を目指して
今回、「NAGANO-OIC 2021」にご応募いただきましたが、応募にあたってどのような課題感をお持ちだったのでしょうか。
関
当社は創業以来、食に軸を置いて事業を展開してきました。主力事業は保育園や幼稚園に対して給食を提供することですが、給食というのは園にとって重要である一方、現状維持でルーチンなものになりがちです。当社には「給食道」といって、食の提供に留まらず、豊かな給食と食教育を一緒に提供していきたいという理念があります。既存の枠に囚われることのない新しい価値のある給食、持続可能な給食づくりをしていきたいと考える中で、スタートアップ企業との共創がひとつの策になるのではないかと考えました。
自社だけでは考えつかない提案が全国から集まる
スタートアップ企業からはどのような提案が集まりましたか。
関
普段は出会うことがない全国のスタートアップのみなさまから、本当にたくさんのご提案をいただきました。食材の提案から、AIやIoTを使った業務改善、新規事業の立ち上げ、中には海外展開のご提案など、「こんな企業とこんなことができるのか!」というものがたくさんあって驚きました。
ご提案の中から、実際に動き出したプロジェクトはありますか。
関
タイミングさえあえば取り組みたいものがいくつもあったのですが、今回はその中から2社とそれぞれ協業することにしました。
1社は地域課題や社会課題を解決しながら地域をブランディングする企業さんで、色々な共創の仕方があるのですが、取り急ぎ廃棄野菜を乾燥化してできた粉末を使った乳幼児向けパンを作るプロジェクトが動いています。野菜パンは離乳食期の乳幼児にとって大切な栄養源になります。この原材料に廃棄野菜を使うことで、地球に優しいサーキュラーフード(環境負担を減らした持続可能な食)を提供することが可能になります。
もう1社とは、IoT技術を活かした「学習するゴミ箱」を作ることになりました。保育園や幼稚園の調理室に置いて、どういった料理のどんな食材が廃棄されているかを分析し、栄養価を意識しながらも廃棄食材を減らす献立作りに役立てます。年度内に長野市内の5つの施設で実証実験を行います。
自分たちの軸を持ちつつ、素直に相手と向き合う
実際に取り組まれて、改めてオープンイノベーションに対してどのような感想を持たれましたか。
関
課題に対する解決策が生まれるのはもちろんですが、それ以外にも新たな価値を生み出す可能性があると感じました。自社の視点だけだと、なかなか新しいものは生み出せませんが、共創することによって限界を超えることが出来ます。また、NAGANO-OIC以外の業務に対しても今までとは違う視点でアプローチする習慣が身につきましたし、新しいことに挑戦する際の実現性が飛躍的に上がったように思います。
オープンイノベーションに取り組むに当たり、心構えや下準備などは必要でしょうか。
関
社内の課題抽出や課題解決に取り組もうとすると、これまでの経験や思い込みが邪魔をして「こんなことできるわけない」と思ってしまいがちです。それではいつまで経っても新しい価値は生み出せません。柔軟に考えて取り組むことが大切です。
当社も本格的なオープンイノベーションはこれが初めてですが、外部を素直に受け入れる気構えがとても大切だと思いました。一方で、何でもかんでも受け入れていては、本当に解決したい課題から離れてしまいます。自分たちがどんな課題をどのように解決したいのか、要件定義をしっかり伝えることも大切ですね。
オープンイノベーション活動を検討している企業に対してメッセージをお願いします。
関
どの企業にも大小様々な課題があるかと思います。または、課題感はあるけれど、それが何なのか具体的につかめていないという企業もあるかと思います。既存事業の見直しでも、新たな価値創造でも、オープンイノベーションというのは非常に有効な手段のひとつです。そのきっかけとして、NAGANO-OICは魅力的なプロジェクトです。
また、オープンイノベーションが成功するかどうかは経営層のコミットメントにかかっています。新しいことを始めるわけですから、現場だけでなく経営層が責任を取る覚悟で取り組むと、より成果が出しやすくなると思います。